商品について
SEシリーズのフラッグシップモデル『SE846』に新色が登場。
■プロフェッショナルおよびオーディオファイル向けにデザインされた『SE846』は、低域、中域、高域の3wayシステム構成の高精度クアッドMicroDriverを搭載。
■イヤホンには画期的なローパスフィルターを採用。真のサブウーハー効果により明瞭性やディテールを損なうことなく深みのある低域パフォーマンスを実現しています。
SHUREイヤホンのフラグシップモデル「SE846」が、それまでの最上位モデルであった「SE535」から進化したポイントは大きく3つある。1つめは、SEシリーズとして初めて4基のバランスド・アーマチュア型Microドライバーを搭載した3ウェイ・4ドライバー構成を採用したこと。2つめは、独自開発によるローパスフィルターの採用。3つめは「ノズルインサート」と呼ばれるイヤホン内部のパーツを交換することで、音の違いが楽しめるギミックを採用したことだ。実際に試聴してこのノズルの効果を試してみたい。
ビル・エヴァンス・トリオの『Milestone』を聴く。最初に「バランス」のノズルインサートから試した。ピアノの演奏が静かに始まり、ウッドベースのどっしりとした彫りの深い低域がオーバーラップしてくる。そこに絹糸のように繊細なハイハットの音色がパウダー状に降り積もっていくような、演奏序盤のクールな情景がリアルに再現される。演奏は徐々に熱気を帯びはじめる。ビル・エヴァンスの硬質なタッチのピアノは、他のイヤホンで聴くよりも、SE846で聴くと不思議にいつもよりも体温が高く感じられた。楽器間のセパレーションが絶妙な間合いを保ちながら演奏はクライマックスへと進行していく。“ソロ回し”では各プレーヤーのテクニックが細部まで緻密に再現されるだけでなく、オーディエンスを演奏へと引き込もうとするグルーブ感までが伝わってくる。ライブレコーディングならではの魅力を存分に味わうことができた。
ノズルインサートを「ブライト」に変更して聴いてみる。ピアノやドラムスなど、高域の煌びやかさや伸びやかさがアップした印象。硬質でクールなピアノのタッチがさらにクリスタル感を増して、演奏全体がゴージャスに華やぐ。ベースの音はややクールに味わいを変えたが、あっさりとしすぎることはない。元々備えている解像感やクリアネスの素性が際立ち、BAドライバーのイヤホンらしさが最も引き立つノズルインサートだと感じた。
変わって「ウォーム」のノズルインサートを使用。今度は中域の感度やスピード感を保ったまま、ベースの量感が一段と増すような印象。演奏全体の重心が下がり、安定感がさらに高まる。
例えるなら、これまでのヘッドホン・イヤホンのサウンドが写真や絵画に描かれている動物であるとしたら、SE846のサウンドは本物の動物が目の前に飛び出してきたような、別次元のリアリティを感じる。もちろん、そのサウンドパフォーマンスはエージングを重ねていくことで一層華開くはず。オーナーをとことん満足させてくれることは間違いない。
文:渡辺憲二
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。