商品について
超小型の密閉型ハウジングながら、新開発の小型高性能ドライバーにより迫力の重低音を再生。専用設計のStayHear Ultraチップが高い遮音性と安定した装着感を実現し、タッチノイズを低減するデザインと共にクリアなサウンドをお届けします。
◆密閉型の小型ハウジングを採用し、耳への負担を軽減
◆専用設計のStayHear Ultraチップにより、高い遮音性を実現
◆コンパクトなキャリングケースが付属
◆Apple製品対応モデル
「Bose SoundTrue Ultra in-ear headphones(以下、SoundTrue Ultra in-ear)」は、“ボーズ史上最小”を謳うインイヤー型のイヤホン。小型軽量設計による快適な装着性と、音質を追求したニューモデルだ。
ボーズと言えばノイズキャンセリング機能を持つ「QC(クワイアットコンフォート)」シリーズを連想する方も多いだろうが、本機はそうした電気仕掛けを持たないノーマルタイプ。同社のラインナップとしては、「Bose SoundSport in-ear headphones」に続く第2弾とも言えるが、本機はスポーツ向けでなく音質を追求している点で異なり、フラッグシップ的な性格を持つ。
機能面ではマイク付きリモコンを備え、iPhone/iPodなどiOS端末用の「Apple製品対応モデル」と、Androidなどのスマートフォン用の「スマートフォン対応モデル」の2種類を用意。カラーはiOS端末用がチャコールと呼ぶグレー系と、フロストと呼ぶホワイト系の2色から選べる。Android用はチャコールのみだ。
製品を手にとってみると、驚くべきはやはりコンパクトなシルエットだ。造型がシンプルなこともあり、ギュッと凝縮された印象を受ける。試聴機はチャコール色のせいか、質感がプラスチック素材そのものでやや素っ気無さも感じるが、これは軽量化を最優先した結果であると言い、合理性を優先するボーズの伝統を感じる。近年、この価格帯の高級イヤホンは、見栄えの良いアルミ素材を採用するケースが多いので、ある意味対照的で面白い。
実際に装着してみると、耳穴にピタッとフィットする感覚が心地良い。「StayHear Ultraチップ」と呼ぶイヤーチップの効用だが、これは同社のインイヤー型ノイズキャンセリングイヤホン「QC20」に付属する「StayHear+」と同じもの。耳穴に触れる部分は、富士山のような裾野の広がった円錐形状で、しかも薄く柔らかいのが特徴で、個人差を吸収してくれる。こうした構造でも耳穴からズレないのは、軟骨のような“羽”が適度なテンションで支えているお陰である。
少なくとも筆者の場合、完璧なフット感によって長時間の装着でも全く違和感が無く、さらに吸盤のような密閉性によって、周囲の騒音がぐっと軽減される効果も体感できた。新幹線で東京と大阪を何度も往復しているが、装着感は実に快適で、同時に高い遮音効果が得られることから、新しい定番イヤホンとして使い続けたくなった。
試聴はiPhone 6への直接接続と、ポータブルヘッドホンアンプを追加してのハイレゾ再生との両方で行った。曲は平井堅の「切手のないおくりもの」(96kHz/24bit/FLAC)。ディキシージャズ風のアレンジが施され、アコースティック楽器も多用された優秀録音音源だ。
まずはiPhone 6に直接接続。冒頭の口笛やアカペラ風のボーカルは、粒立ちが良くニュアンスが豊かで、色付きなく鼓膜にダイレクトに届く。本機はプラスチィック筐体だが、音の濁りは微塵も感じず、使用する素材よりも設計力が重要と再認識させられた。トランペットなど金管楽器は抜けの良さで張りや輝きが感じられ、実に魅力的に聴かせてくれる。
次に同曲をポータブルヘッドホンアンプを通してハイレゾ品質で再生。バラエティー豊かな楽器それぞれが分離良く楽しいハーモニーを奏でる。スーザフォンが放つ低域のスケール感も見事だ。ハイレゾ音源の分解能を、本機は充分に引き出す能力を備えていることが分かる。圧巻はバスドラムの実在感。収録されている音量は小さいのだが、低く厚みのある打音が遠くから聞こえる様子がリアルで、制作者が意図したであろうバランスの美が感じられ、音楽性を豊かにしている。
ケーブルは絡みにくい素材で取り回しは良いものの、少々硬質なためかタッチノイズがやや気になる。これは遮音性の高さとの裏返しとも言えるが、音質が優れているだけに、今後改善して欲しいポイントに感じた。
全体的に、これほどコンパクトな筐体で、低域から高域までナチュラルな広帯域サウンドを実現できたのは、遮音性の高さに加え、ボーズが独自開発したという新型ドライバーや、総合的な音質チューニングのセンスが融合した結果だろう。見た目は地味だが、やはり「ボーズならでは」と思える魅力がいっぱいで、価格以上の価値を感じる完成度の高い1台だ。
文:鴻池賢三
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。