商品について
低域から高域に至るまで歪が極めて少なく、スピーカーのインピーダンスにかかわらず周波数特性が変化しない非常に優れた性能のパワーアンプを搭載
HD-AMP1は、2系統のアナログ入力、2系統の光デジタル入力、1系統の同軸デジタル入力を装備。さらにDSD、ハイレゾ音源に対応したUSB-B、フロントUSB-A入力を備えています。新開発のUSBインターフェースデバイスによってPC / Macからの11.2 MHz DSD、384 kHz / 32 bit PCMの入力に対応。D/Aコンバーターには新たに「ES9010K2M」を採用。オリジナルデジタルフィルター「Marantz Musical Digital Filtering」および高速アンプモジュール「HDAM」、「HDAM -SA2」を用いたI/V変換回路、ポストフィルター回路によってハイスピードで情報量豊かなサウンドを実現しています。
パワーアンプには「Hypex UcD」スイッチングパワーアンプモジュールを採用。低域から高域に至るまで歪が極めて少なく、スピーカーのインピーダンスにかかわらず周波数特性が変化しない非常に優れた性能を備えています。コンパクトサイズながら定格出力は35W+35W(8Ω)を実現しており、ブックシェルフスピーカーによるニアフィールドリスニングから本格的なフロアタイプのスピーカーのドライブまで、余裕を持って対応します。また、ヘッドホン専用アンプも搭載。SACDプレーヤー等で定評のあるハイスルーレートオペアンプにHDAM®-SA2によるディスクリート出力バッファーアンプ追加した回路構成を採用しています。ヘッドホンに合わせて設定できる3段階のゲイン切り替え機能も装備しています。
「HD-AMP1」は、無帰還型バッファーアンプ搭載ヘッドホンアンプ/USB-DAC「HD-DAC1」のデザインとコンセプトを継承しつつ、スイッチングアンプを採用することでコンパクトさと音質を両立させたUSB-DAC内蔵プリメインアンプ。「ミュージックリンク」の名を継承してコンパクトながら高い再現性を獲得した本機の実力を検証する。
試聴はマランツがリファレンスシステムとして推奨しており、開発にも用いられたというB&W「CM1 S2」との組み合わせから始めよう。まずはCD/SACDでアナログ入力の音質を確かめる。最初に強烈に印象付けられたのが、現代曲を再生した時のパワーと瞬発力。デスクトップに乗る規模のシステムなのに秘めている能力が桁違いだ。
ヒラリー・ハーンの『アンコール』(CD)は、バイオリンの弓が弦にコンタクトする瞬間の弾けるインパクトが鮮烈で力強い。音楽の立ち上がりがつねに鋭く一瞬とてなまらない。B&Wの音場表現の特徴に深いデプス(後方への奥行き)が挙げられるが、大型のセパレートアンプもかくやと思わせる程、背後に深い奥行きが生まれ水平方向の眺望が堂々と開ける。CM1 S2はコンパクトなプレイバックリファレンスとして定評がある一方、その色彩感も特徴。さすがに長年のパートナー関係だけあってスピーカーシステムのキャラクターを熟知し、凡百の「クラスDデジタルアンプ」の蒸留水的無味乾燥がなく、多彩な音色を引き出す。
USB入力は、こうしたアナログ入力での音質傾向をベースとしつつ、ESSらしい高い解像感と煌びやかなサウンドが味わえる。さらに、この価格帯のUSB-DACではなかなか聴くことのできない地に足の付いた低域再現が際立つ。『ワルツ・フォー・デビー』(FLAC192kHz/24bit)はスコット・ラファロのベースが、指弾きの克明なタッチと量感を両立させてくれる。
スピーカーシステムを大型フロアタイプのエラック「FS249BE」に替えてみよう。B&Wの8Ωに対しエラックは4Ω、ドライバー数も多いこの大型システムをHD-AMP1は悠然とハンドリングする。
FS249BEの低域再生能力を引き出し、ヒラリー・ハーンはやや線が太いがB&Wの理知に対し現代曲らしい情念の音楽に変貌する。ウーファーのグリップ力、低音の支えはコンパクトなプリメインの域を大きく逸脱している。
HD-AMP1は、ミュージックリンクの思想を引き継ぎながら、現代のアンプ技術の進歩をストレートに反映して、駆動力や瞬発力に裏付けられた豊かな音場や音色を引き出してくれるアンプだ。デスクトップシステムと遠慮することなく、本格的なスピーカーと組み合わせて、その駆動力と再現性を存分に味わってみるのはいかがだろうか。
文:大橋伸太郎
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。