商品について
ヒットモデルとなった「DM008」をベースに、材質変更と専用チューンを施したプレミアムモデル。
◆筐体はオールアルミボディとすることで、高い剛性を確保。
◆ユニット口径が8φながら10φのユニットと同等のパワ−やクオリティを実現しました。
「DM008P」最大のアピールポイントはダイナミック型ドライバーだ。振動板の口径は8mmで、ドライバーユニット全体のサイズもそれに準ずる。しかし駆動力の基盤となるマグネットは、通常の10mmドライバーに搭載されるマグネットに相当するサイズのものが搭載されている。
小さめの振動板を大きな磁石で駆動する。いわゆるパワーウェイトレシオ(出力重量比)に優れる構成と言えるだろう。軽い車体に強力なエンジンを積んだスポーツカーのようなものだ。振動板を強力に加速させ制動し、正確かつ力強い駆動を期待できる。
そして筐体。本機はオールアルミ筐体だ。オールアルミ化したことで剛性を高め、それに伴って専用の音質チューニングも施されたとのこと。アルミの仕上げ、質感もよい具合だ。アルミの輝きをほどよく生かしており、プレミアムモデルらしい雰囲気を漂わせる。
さらにDM008Pで印象的なのは、その堅実なサウンドだ。それが特にわかりやすいのは低域だ。低域から超低域にかけてを豊かに広げるのではなく、低域楽器の芯の部分をぐっと締め込むようにしっかり出すことで、楽器としての音色を力強く明確にしていると感じる。
例えばベースは、肉付きはほどほどで骨格が強い音色といった印象だ。しかしそれでいて、硬い音色にはなっていない。筋肉質すぎず、骨太で筋肉と脂肪をバランスよく備えている。
おかげでDaft Punk「Get Lucky」のような低重心で分厚いベースの音色やフレーズも、沈み込ませつつお尻の重い感じにはせず、そして明確にしつつ硬くはせず、柔軟な弾みも表現できている。
超低域における空気感を重視して音づくりをしているイヤホンもあるが、音楽に寄り添った堅実さを感じさせるのはDM008Pのようなチューニングだろう。その低域の出し方のおかげで、空気感がもわっとしてしまうこともないし、他の帯域を邪魔(マスキング)してしまうこともない。
高域は、湿度感の表現にも対応する、落ち着いたほぐれ方をしてくれている。女性ボーカルやシンバルのシャープな成分も、しっとりとした感触で耳に優しい。でもぼやけたほぐれ方ではなく十分に明瞭で素直な音色だ。
メタル系のディストーションギターのエッジ等はちょっと弱く感じるが、代わりに厚みを豊かに感じやすい。わかる人にはわかりやすいであろう例を出すと、ヴァン・ヘイレンよりもブラック・サバスの方に合うような音調と言える。
こうした音調のおかげで、聴きやすく、聴き疲れしないことも好印象だ。事細かに聴き込みたいときには解像感がもっとわかりやすく強いタイプが合うと思うが、いつでも様々な場面で音楽を聴いていたい、そのためのイヤホンが欲しいという方には、こういうタイプが合うと思う。
自らの仕事を堅実に継続しその技術力を高めてきたメーカーが、その堅実さと力を自社ブランドで存分に発揮したイヤホン。DM008Pのようモデルは、何よりも音を大切にするオーディオファンにとってまさに歓迎すべきモデルと言えるだろう。
文:高橋 敦
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。